シスになろう小説「スカイウォーカーの夜明け」

かつて僕はライトサイドの信奉者だった。

 

スカイウォーカーの夜明け。シークエル最終作のタイトルが公開されたとき、フォースは僕に最初の予知夢を見せた。このシークエルの結末を「レイ・スカイウォーカー」と呼ばれる人物が閉じることになるという災厄。

 

スカイウォーカーの文法。選ばれしジェダイ、ダークサイドへの転向、そしてライトへの帰還という終わりなきループ。

 

元祖三部作から始まったこの形式をプリクエル三部作も引き継いだ。

 

アウトキャストもそうだった。

 

ジェダイアカデミーもそう。

 

KOTORも。

 

The Force Unleashedも。

 

The Old Republicも。

 

フォースの覚醒も。

 

Rebelsも。

 

Fallen Orderも。

 

関連小説も皆全てそう。

 

しかし最後のジェダイだけは違った。そこには希望があった。この終わりなきループから脱する希望が。

だからこの予知を回避することは出来たはずだったんだ。

 

 

 

パルパティーン登場の情報が出たとき、二度目の予知夢を見た。「レイ・パルパティーン」。誰もが一度は考えた余りにも短絡的な解。誕生日のサプライズを事前に知らされていた時のような惨劇。

 

所詮夢だ。まさか起きるはずはない。

しかし時にそのまさかが現実となるのだ。

 

 

オープニングクロールが始まる。

 

      死者の口が開いた!

 

      レイは何者だ?

 

      ニヤリと笑うパルパティーン———

 

 

「イヤな予感がする」

 

やめてくれ、それだけは勘弁してくれ、内なる声が叫ぶ。

 

       レイ、お前はパルパティーンの孫だ。

 

       受け入れることが出来ないレイ———

 

分かるよ。僕も受け入れられない。

 

気づけば僕はダークサイドの侵入を拒むことが出来なくなっていた。

 

フィンが言いかけたことって結局なんだよ。ポーが運び屋だった話いる?3POの記憶、バックアップとってるんでしょ?新キャラ多すぎ。ローズもうこんな扱いかよ。ヒヨコはグッズの売れ行き不調だったんだな。ダークサイド・レイのカニ鋏セーバーもレイの黄色セーバーもディズニーアトラクション用かな。

 

ダークサイドの帳が降り始める…。

 

僕の中のライトサイドが必死に抵抗している。砂漠のチェイス最高やん。艦隊集結シーン燃える。ベンの見せ場もある。ランド!ハン!ルークのXウィング!レイアのセーバー!

 

しかしダークサイドは非情である。

 

      戦艦ひとつひとつが星を破壊できる———

 

まるでデススターのバーゲンセールだな。

そしてその時が訪れる。

 

      お前の中の憎しみ、怒りを感じるぞ。

      こやつらは間もなく全滅する。

      こやつらを救えるのはお前だけだレイ。

      ダークサイドに落ちるのダァー

      ヒェーヒェッヒェッ       

 

ここにきてエピソード6完コピ…!!

そして僕はダークサイドに屈した。

 

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これでよかったんだ。レイがスカイウォーカーじゃないだけマシだよ。スカイウォーカーは滅び、今後スカイウォーカーの物語が展開される素地も失われた。これで新しいスターウォーズが始まる。それだけでいいじゃないか。

 

 

 

 

 

その儚い達観を「レイ・スカイウォーカー」が打ち砕いたと同時に、僕は僅かに残った光さえも失ったのだ。