「スターウォーズ/フォースの覚醒(Star Wars: The Force Awakens)」

スターウォーズ/フォースの覚醒(Star Wars: The Force Awakens)」。

 

待ちに待った、本当に待ちに待った作品だ。
 
私は筋金入のスターウォーズファンだ。
旧三部作の公開は生まれる以前だったので、初めて見たスターウォーズはテレビ放映の「EP6(ジェダイの復讐(帰還))」であった。
 
それからというもの、毎年のようにサンタクロースにライトセーバー(本物)が欲しいと願っていた。なだめる両親も大変だっただろう。
 
懐中電灯でライトセーバーごっこもした。
口でブゥンブゥンと言いながら。
 
あれから20年以上たった今でも、自動ドアの前では手をかざしてしまう。
 
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今作の感想を一言で表すと「静かな興奮」だ。
 
誤解を恐れずにいえば、今作を観る前と後では、大きなテンションの落差があった。
 
メディアの熱狂も手伝って異常な興奮と共に劇場に足を運んだ私であったが、鑑賞後は意外にも冷静であった。それでいて静かに興奮していたのだ。
 
「勘違いするな、これから始まるんだ。」
 
そのようなメッセージが、この映画には確かにあったのだ。
 
 
以下、2か月前に私がTwitterにあげた脚本予想を基に作品の分析をしようと思う。
(今記事に挙げるツイートは全て10/20/2015に書かれたものです)
 

 

<ここからネタバレ>
<映画を鑑賞後に読むことを強くお勧めします>
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ほぼこの通りでした(ドヤ顔)

オープニングクロールで

 

「ルークが消えた!」

 

と出た時点でガッツポーズしてしまった。

 

得意げに書いてしまったが、しかしこの程度の脚本予想はスターウォーズ・ファンであれば誰でも思いつくのだ。ここが重要なところで、JJエイブラムスはオールドファンの「お約束」を全く外さなかった。監督としての「我」を殺し、"オールドファンのため"今までのスターウォーズをそっくりそのままトレースしているのだ。

特に今作「EP7(フォースの覚醒)」は、伝説の始まり、「EP4(新たなる希望)」のプロットを忠実になぞっている。

 

 

例えば、両作品のオープニングから主役登場までの展開を比較するとよく分かる。

 

EP4(新たなる希望)

機密情報を持つレイア(キャリー・フィッシャー)が帝国に追われる。

レイアは機密情報をR2-D2にたくす。

ダースベイダー(デビッド・プラウズ(演)、ジェームズ・アール・ジョーンズ(声))登場。レイア捕縛される。

R2-D2(とC-3PO)が砂漠の惑星タトゥイーンとルーク(マーク・ハミル)が出会う。

 

 

EP7(フォースの覚醒)

機密情報を持つポー・ダメロン(オスカー・アイザック)がファーストオーダーに追われる。

ポーは機密情報をBB-8にたくす。

カイロ・レン(アダム・ドライバー)登場。ポー捕縛される。

BB-8が砂漠の惑星ジャクーでレイ(レイジー・リドリー)と出会う。

 

このように全く同じである。この後も、主人公の導き手(この役回りは重要である)で(ハン・ソロ=ベン・ケノービ)に出会う、敵の最終兵器(スターキラー基地=デス・スター)は惑星を破壊する威力、導き手と共に最終兵器に乗り込みバリアを解除する……など、数え挙げればキリがないほどだ。

 

このように「EP4をなぞる」方針で進む今作であるが、この方針はある重要な問題を監督につきつけたに違いない。

 

 

EP4(新たなる希望)では物語の導き手、つまりオビワン(ベン)・ケノービが死亡するのだ。

これはつまりEP7(フォースの覚醒)には"犠牲"が必要となるということを意味する。

 

ちなみに私は、

 

 

と予想をしたが、思い切り外してしまった。

 

この役回りハン・ソロを選んだことに賛否両論あるだろう。

しかし私は英断であったと思う。

 

ハン・ソロスターウォーズ世界の中でもトップクラスの人気キャラクターだ。

それだけにこれから新しいサーガを描いていく上でハン・ソロの扱いには慎重にならざるを得なくなる。時に足かせにすらなるだろう。

JJエイブラムスはEP8以降の監督はしないことが明言されている。つまり彼の仕事はこれからの土台構築だ。彼は次作以降の為に、あえて「ハン・ソロ殺し」の咎を背負ったのだ。

 

退場のさせ方も良い。息子であるカイロ・レンに殺される。

カイロ・レンの側に立てば、これは重要な意味を持つ。

 

カイロ・レンは明らかに未熟な悪役として描かれている。カイロ・レンのライトセーバー(十字のライトセーバー!)の光刃が揺らいで見えるのは、その未熟さを表現しているのではないだろうか。

 

その未熟なカイロ・レンがこれから(ベイダーのような)カリスマ的な悪役として成長していく為には「父親殺し」(オイディプス王)という通過儀礼を経なければならないのだ。

 

またカイロ・レンはダースベイダーの信奉者である。

これはまさに我々スターウォーズ・ファンのことだ。この物語で我々が感情移入すべきなのは、実は彼なのである。

 

 

カイロ・レンをはじめとして、JJエイブラムスは旧キャラクターを大事にしながらも、新しいキャラクターを魅力的に描いた。これがJJエイブラムスの最大の功績だろう。

レイやフィンの成長は物語の軸になりうるし、ポー・ダメロンのいぶし銀の活躍はこれからもファンの目を引き付けるだろう。

 

まさに彼はこれから続く新しいスターウォーズ・サーガの堅固たる基礎を構築することに成功したといえる。

 

映画はレイとルークの出会いで終わる。

これから先どのような展開になるのだろう。

JJエイブラムスが整えた下地はどのような物語も許容する懐の深さがある。

 

予想にはこうツイートしたがどうなることか…。